Research
研究内容
「なぜ生きものはあんなに上手く動けるのか」.この問いを,計測・数理モデル・実機製作の三方向から攻めています.
研究室のスタンス
ロボットを賢くする方法は,ふつう「もっと良いコントローラを書く」ことだと考えられています.
でも生きものを見ていると,どうもそうではないらしい.
昆虫の脳はとても小さく,一本一本の脚をリアルタイムに指令している余裕はありません.
にもかかわらず,彼らは砂の上でも草の茂みでも壁でも,あっさり歩いてしまいます.
つまり,かしこさの一部は身体の側に埋め込まれている.
脚のかたち,筋のやわらかさ,地面から返ってくる力——
これらの相互作用が,コントローラの代わりに仕事をしている.
この「身体がやっている計算」を取り出して理解し,
ロボットの設計へ持ち帰るのが,私たちのやり方です.
そのため研究テーマは,虫の歩行計測から人工筋の試作,
不整地でロボットを走らせる実験まで,かなり幅があります.
解析だけでも,ものづくりだけでも足りない,というのが正直なところです.
01 生きものの歩き方を解剖する
コオロギ,バッタ,ムカデ,カニといった多脚の生きものを対象に,
高速度カメラやモーションキャプチャで歩行を計測し,脚間の協調がどう生まれるかを解析します.
具体的にやっていること
- コオロギ(Gryllus bimaculatus)の脚間協調メカニズムの解析.神経節どうしの上行・下行信号がリズムの維持にどう効いているかを,実験と位相振動子モデルの両面から検討しています.
- バッタが水平面・垂直面・天井面を歩くときの歩容の違いの解析.重力方向が変わると脚の役割分担がどう組み替わるのか.
- アリの大顎の超高速運動(トラップジョー)の画像計測と,そのラッチ機構のモデル化.
- 楕円形の膝関節がジャンプ性能に与える影響など,関節形状そのものが持つ機能の解析.
02 やわらかいアクチュエータをつくる
McKibben型空気圧人工筋(MPA)は,ゴムチューブを繊維スリーブで包んだだけの単純な構造で,
加圧すると縮んで力を出します.筋肉に似た非線形なばね特性を持つのが特徴で,
この特性自体がロボットの運動を安定化させる——というのが長年の研究テーマです.
具体的にやっていること
- LT-PAM(Low-Cost and Tough Pneumatic Artificial Muscle):入手しやすい材料で,安価かつ丈夫に作れる人工筋の設計.製作手順をオープンハードウェアとして公開しています.
- 小型ソレノイドバルブによる複数MPAの同時制御,動的量子化器を用いた長さ制御.
- 張力センサを人工筋に組み込み,センサレスに近い形で状態を推定する試み.
- 拮抗二関節筋における,張力フィードバックだけによる自律的な協調制御.
- 論理回路のアナロジーで空圧回路を設計する「電気を使わない制御」の検討.
- 弾性体を組み合わせてMPAに曲げ運動をさせる機構,カニ型ロボットの外骨格構造への埋め込み.
03 フィールドを走破する移動ロボット
整地された床で動くロボットは,もうたくさんあります.
問題は,土や瓦礫や斜面といった「決まった形をしていない場所」でどう動くか.
走破性をきちんと測る物差しづくりから,実機開発まで行っています.
具体的にやっていること
- 地形の空間周波数解析:不整地を正弦波状の地形に分解して捉え,
「どの空間周波数の凹凸に強い/弱いか」という形で移動ロボットの走破性を定量評価する手法.
- 陰的・陽的制御を組み合わせた水陸両用ムカデ型ロボットの開発.
- 災害対応を想定したモジュール型ロボットシステム.目的に応じて機能モジュールを組み替えます.
- 無限定環境での土砂搬送に向けた柔軟湾曲型コンベア,植物の根に着想を得た軟弱地盤用アンカーなど,
現場を意識した要素技術の開発.
- 転動ロボットの旋回運動解析といった,非ホロノミックな移動体の基礎研究.
04 脳がなくても歩けるのか
“Brainless Walking”——中枢のパターン生成器を持たない,
弱いアクチュエータを並べただけのロボットが,動物らしい歩容を自発的に見せる.
この現象は,制御が身体側に「陰に」埋め込まれていることを端的に示しています.
具体的にやっていること
- アクチュエータ特性そのものから歩容が創発する条件の解析.拮抗構造における協調のモード分岐.
- 超分散型・超多脚の「無脳歩行ロボット」の試作.
- イモムシのような柔らかい個体が群れたときのロコモーション.
- Physical Reservoir Computing を使って,センサを増やさずに人工筋の状態を読み取る試み.
研究テーマは相談して決めます
ここに書いたのはあくまで研究室の地図です.
配属後は「どのあたりに興味があるか」を聞いたうえで,
本人の得意・不得意も踏まえてテーマを一緒に決めていきます.
ものづくり寄り,解析寄り,プログラム寄り,どの方向にも振れます.
配属を考えている方へ